東北再生経済研究所

再生だより

人材育成が復興の鍵

インタビューアイリスオーヤマ・大山健太郎代表取締役社長

アイリスオーヤマ・大山健太郎代表取締役社長

仙台経済同友会の代表幹事も務める大山健太郎社長は地元経済界として「復旧は速やかに、復興は時間をかけて。復興庁は仙台に」を求めたが、残念ながら実現しなかった。そこで考えたのが「復興の鍵は人材育成」。東北大学大学院の経済学研究科長だった大滝精一教授と組んで「東北未来創造イニシアティブ」を立ち上げ、地域のリーダーを育てる「人材育成道場」を続けている。これまでに大船渡、釜石、気仙沼、南三陸などで108人の事業家(卒塾生)を育てた。残り2年間を加えると160人を輩出する予定で、今後の「地方創生」にも果敢に挑戦していくであろう。日本の第一次産業と共に生き、成長してきた大山社長はTPPで節目を迎えているこの分野について「酪農、とくに養豚などは打撃を受ける可能性は高いが、いいもの、おいしいものを作る人にはフォローになる」と見る。「生産者目線だった農業が消費者目線に立てば、可能性は格段に大きくなる」というのが、メーカーベンダーという分野を創業した人の弁でもある。そして「仙台空港の民営化で、海外との定期便の増便が東北のインバウンドを押し上げ、そこに音楽ホールが2020年までに完成していれば、復興の象徴的存在になる」と、仙台、東北の未来を語る。(文責 伊藤裕造)

東北地方の川と水の資源を見直そう

寄稿明治学院大学名誉教授・大木 昌

明治学院大学名誉教授・大木 昌

東北地方がもつ大きなポテンシャルの一つは、豊かな水とその水を湛えた川です。東北の豊かな水は、伝統的には農業、とりわけコメ作りに利用されてきました。しかし、残念ながら、これまで、このポテンシャルを農業以外に十分に活かしきってはいません。たとえば、東北地方の各地の渓流を流れる水や湧水そのものが、ミネラルウォーターとして十分商品化できる貴重な資源です。次に川のポテンシャルを考えてみましょう。ここでは①運輸・交通手段、②観光資源、③エネルギー資源の3つに焦点を当ててみます。まず、運輸・交通手段ですが、現代では人と物の運輸は鉄道と車で行われていますが、東北の川は比較的最近まで人と物資の運輸交通の一角を占めていました。将来も運輸面での活用が考えられます。たとえば盛岡―平泉―石巻などの観光船を運航させることで、新たな観光資源となる可能性が大いにあります。最後に、至る所にある中小河川での発電です。現代の小水力発電の技術は非常に進んでおり、これらを活用すれば東北地方は一大エネルギー供給地となります。川と水を軸に据えて考えると、東北地方は大きな可能性をもった地域と言えるでしょう。

リアルタイム津波浸水被害予測技術の展開

寄稿東北大学災害科学国際科学研究所教授・越村俊一

東北大学災害科学国際科学研究所教授・越村俊一

災害対応でまず必要なのは、被害の全容の把握だ。リアルタイムで得られる観測データやシミュレーション手法で推定し、災害を乗り越えていく力(減災力)を向上するプロジェクト(総務省G空間シティ構築事業)がスタートした。石巻市、東松島市、静岡市、高知市を実証自治体とし、東北大学、国際航業、NECなど5大学、5民間所業者が参画し、より早くより詳細な津波の浸水被害の即時予測発信を目指して実証事業に取り組んだ。この実証に必要な3つ①地震の発生地域と津波の高さと襲来地域の予測②10m区画という高精細な浸水被害予測③準天頂衛星を含めた先端通信技術を活用した予測情報配信の実証、である。津波発生直後きめ細かな情報提供を可能にするG空間防災モデルを全国展開することで巨大津波災害に対する回復力の向上が可能になる。

名取市の海岸林再生プロジェクト10か年計画

寄稿公益財団法人オイスカ啓発普及部副部長・吉田俊通

公益財団法人オイスカ啓発普及部副部長・吉田俊通

震災直後の3月17日に林野庁に「海岸林再生を通じて復興の一端を担いたい」との申出書を提出した。①行政の立案した計画に協力②主役は地元、との考えを示したことと避難所での出会いから、被災農家30名との「名取市海岸林再生の会」が結成できた。林業種苗法に基づく資格を取得、海岸林100haの整備協定を結び、植栽を開始、2020年に完了する計画で、2033年までの育林には総額10億円を要する見通しだ。稲作では「苗半作」と言われるが、被災農家の真剣な種苗生産と年間1,700人のボランティアにより2年で26ha、13万本のクロマツが100%の生育率を保っている。宮城南部から福島北部の60kmには幅200mの海岸林が塩害防止、防風、防砂、防潮の多面的機能を数百年に渡って果たしてきた。「入りそめて国ゆたかなるみぎりとや 千代とかぎらじ せんだいのまつ」(伊達政宗)、を復活できるかどうかが、この20年の活動にかかっている。