東北再生経済研究所
代表 伊藤 裕造
1970年(昭和45年)(株)朝日新聞社入社。青森、仙台支局を経て1977年東京本社経済部員。1995年から名古屋、大阪、東京各本社経済部長を務め、2003年同社取締役電子電波メディア本部長に就く。2006年6月(株)東日本放送代表取締役社長。2014年6月同社取締役退任、同年7月から東北再生経済研究所代表。
3・11から4年8ヶ月が経ちました。
集中復興期間も余すところ数カ月となりましたが、復旧、復興に捗々しさは感じられません。その一方で、東日本大震災への関心は急速に薄れています。さらに、風評被害が幅を利かせ被災地の人々を苦しめています。「絆」はいつの間にか緩み、ほどけ、円安による建設資材の値上がりと人手不足による人件費の高騰が、立ちはだかり「震災からの復興なくして日本の再生はない」と言われながら、アベノミクスとは無縁の被災地、「東北」です。
私はあの大震災に一瞬打ちのめされました。だが、直後の被災地をまわり、人を思い遣り、難局に立ち向かっていく東北の人々の姿に感動しました。そして東北再生の可能性を信じました。東北が持つ有用性と潜在成長力を今ここでどう活用できるかです。それは、日本全体を強靭化し経済の安定化をもたらすことができると確信しています。
東北の柱になる第一次産業では農用地効率化、復興特区を活用した水産業の拡大、林業を含めた6次産業化などを推進する基盤づくりの環境を整えた、とも考えられます。
ところが、復旧・復興の遅れはこの可能性を消し去りかねません。そして、最近、やっと目を向けられるようになった「地方創生」です。震災復興と絡めればその効果は数倍にもなるでしょう。かつての出稼ぎの悲哀、それから脱するための公共事業獲得と工場誘致に狂奔せざるを得なかった自治体、それが今、「地域消滅」という脅威に変じました。日本の課題はグローバルの名のもとに地域格差を放置し、大きな図を描けなかった地方経済政策の不在でした。
3.11はこの課題を改めて突き付けています。こういった視点から東北再生を考えていきたいと思います。よろしくご指導をお願い致します。
2015年12月