東北再生経済研究所

再生だより

「イノベーション・コースト」の推進を

インタビュー前復興大臣・竹下亘

前復興大臣・竹下亘

被災地以外出身者で初めて復興大臣になっただけに、「出口戦略を探るのがわたしの役割、今までは言えなかったことも言わなくては」と冷静に認識していた。それが端的に表れたのが、「地元負担」の導入だった。阪神・淡路をはるかに上回る大規模災害でもあり、世界が注目した復旧・復興事業は、これまでには無い様々な大規模プロジェクトが組まれた。さらに福島の原発事故が加わる。「被災地とそれ以外の不公平感」を危惧する首長もいたことに加えて、「5年間6兆円の事業に地元負担は220億円」でもあって、了解を取り付けた。一方で、廃棄物処理などで責任省庁の存在が問われたことなど、災害法制度の抜本的な見直しが必要な時に来ていると指摘。そのうえで、東北の再生、地方創生の第一に挙げているのが、「イノベーション・コースト構想」の実現・推進だ。今後の廃炉技術の確立を考えれば「世界中から優秀な人材が集まるし、ロボットの一大開発拠点になる」とみる。さらに、問題は避難者がどれだけ戻るかが鍵。そこで大事なのが「農林水産業を主体とする仕事場作り。6次産業化を進め、一次産品を有効活用する知恵づくりの仕組み開発が地域創生の具体策であり、その牽引者はヨソモノ、バカモノ、ワカモノだ」と説く。(文責 伊藤裕造)

小さな起業に始まる「地方創生」私案

寄稿経済地域研究所理事・猪瀬迪夫

経済地域研究所理事・猪瀬迪夫

釜石、大船渡、気仙沼を拠点とする東北未来創造塾など様々なプロジェクトが成果を上げているが、民間が担うべき生業づくりが難航している。そこで、新日鐵住金釜石製鐵所で取り組んだ新規事業立上げの経験をもとに、小都市での起業への留意すべき事項を挙げてみたい。まず第一に、起業者はコア商品・コアサービスの競争力の向上と、市場の拡大に不断の努力を続ける。次に、民間企業者は大学関係者と共に、支援者として起業に挑む有意な人材の育成と経営・技術支援を惜しまない。当該市町村は魅力ある街づくりを責任を持って進める。県・商工会議所・地元大学等は行政連携や産学官連携の広域化を目指す。情報の受発信力を高める広域ネットワークの形成こそが不可欠であると思えるからである。希望学を掲げている玄田有史東大教授は「幾多の災害・困難に直面しようとも自立自尊の精神で何かを実現しようとする願望(これが「希望」)を持ち続けることが再生・変革のエネルギーを産む」と指摘する。一人でも多くの市民が自らの役割を認識し、実践者となって頂くことが「地方創生」をもたらすであろう。

仙台港のインフラ復旧でプラス回復

寄稿三陸運輸専務取締役・阿部 寛

三陸運輸専務取締役・阿部 寛

甚大な被災を受けた仙台塩釜港だったが、「港と当社『三陸運輸』が早急に復旧しない限り、震災復興はあり得ないという強い思いを役職員が共有し、周囲にも働きかけた」結果が震災前を上回る業務量になっている。その経過を概略すると2011年3・17仙台港区に緊急物資輸送船入港、3・21石油運搬船、4・7自動車運搬船、4・11太平洋フェリー再開、5・27外航船初入港、6・8コンテナ船輸出再開、といった具合だった。同港は東北唯一の国際拠点港湾だが、コンテナ取扱量は直後の落ち込みを回復、2015年にはピーク時の更新が期待されている。しかし、日本全体でみると、韓国がコンテナ船の大型化に合わせ、国際的なハブ化に成功しているのに比べ、遅れをとっているのが現状だ。そこで今回の大災害を経験した東北各港を大災害が発生した時のバックアップ港として機能させる方向で、設備の充実・強化を図ることが日本全体のレベルアップにつながっていき、国益にかなう措置になると考えている。

津波被災地支援で石巻・気仙沼に支部を設立

寄稿商工中金仙台支店長・大藪雅彦

商工中金仙台支店長・大藪雅彦

仙台市内では、ほぼ震災前の状況を取り戻し、業績が好調な業種もあるが、津波被害の大きかった沿岸部は、事業を再開したものの売上高が回復していない事業者が多い。そこで、岩手、宮城、福島の各県と連携し、商工中金の東京都区内11店舗で「復興支援ロビー展」を開催。特産品や観光情報を紹介した。さらに、お取引先同士のビジネスマッチングによる販路開拓支援をしているほか、商工会議所、中小企業団体中央会、JAグループなどと商談会を共催(後援)している。また、取引先で構成している「中金会」という組織があるが、とくに石巻、気仙沼には支部を設立した。また、若手経営者の集まりの「ユース会」が全国交流会を10年振りで仙台の国際センターで開催、2000人が参加するなど、「元気な宮城、東北を取り戻す」まで、粘り強く復興支援を続けていく。