東北再生経済研究所

再生だより

素材豊かな東北のブランド力アップを

インタビューJR東日本・清野智会長

JR東日本・清野智会長

JR東日本の清野智会長は2015年6月8日、東北観光推進機構の会長に就任、震災後4年半を経過した鉄道の復旧と合わせ、今後の東北の観光戦略について、「東北のブランド化」を達成することがポイントになると考えている。仙石線の全面再開に続き、2016年度までの5年間を重点整備期間として計画全体の8割を完了させる。そのうえで、北海道の新幹線開業で起きかねない「東北パッシング」を防ぎ、「日本東北トレジャーランド」をロゴに「豊かな自然・景観、歴史、文化、産物と宝にあふれる東北のイメージを定着させる」という。その一つに、新たにクルーズトレイン「四季島」を創り、2017年春に運転開始する。10両編成だが、客数はわずか20数人という超豪華列車。フェラーリで知られる奥山清之氏がデザインしている。大震災で威力を発揮した早期地震検知システムの強化を始め、首都直下型への備へなどハード面の対応で安全・安心を高めるのに加え、県境を越えた東北一体の地域戦略を充実させる。世界遺産を始め様々な資産(トレジャー)を活用したストーリーを組み立てることができれば、東北は甦るであろう。(文責 伊藤裕造)

津波から逃げ切り死者ゼロに

インタビュー和歌山県・仁坂吉伸知事

和歌山県・仁坂吉伸知事

南海トラフ巨大地震による和歌山県の被害想定も非常に厳しい。全県の死者は9万人、建物被害は全壊が15万9千棟にのぼる。しかし、仁坂知事は「何としても津波から逃げ切り、全ての住民の命を守り、死者ゼロにする」と宣言する。「稲むらの火」発祥の地だけに、津波対策には歴史がある。濱口梧陵が築いた防波堤は1946年12月の昭和南海地震(マグニチュード8)でも広川町を守った。それでも、避難困難地域の人数は2万2705人にのぼる。この人達を津波避難ビル、タワー、防波堤、さらに高台移転も考えるなど、様々な手段で避難させる計画だ。その上に、地震津波観測監視システム(DONET)を導入し、「一刻も早く察知し、全県民に知らせ、逃げ切るのが最大の防御だ」。そのために津波予報業務許可を気象庁から認可されている。しかし、3連動対策だけでも事業費は683億円に及ぶ。「高い確率で死ぬ恐れが強い地域でも助成は薄い。国の負担を高め、何としても計画を実現させて欲しい」と知事は訴えている。(文責 伊藤裕造)

クールジャパン資源を活かした地域一体での観光振興

寄稿東北経済産業局長・守本憲弘

和歌山県・仁坂吉伸知事

観光立国の実現に向けた取り組みが功を奏し始め、訪日外国人旅行者は急速に増加しているが、東北は国内観光で8割、インバウンドは6割程度の回復にとどまっている。震災から4年半が経過したが、復興途上にあり、風評被害などの影響が色濃く残っている。元来、東北地域には、祭り、伝統工芸品、農林水産物など、魅力あふれる多様なクールジャパン資源がたくさんある。しかも、海外にも十分通用するレベルの高いものが多い。企業、国・地方行政機関、金融機関で構成している東北地方産業競争力協議会では地域資源を発掘し、ブランドづくりなどで動き始めてもいる。既に、東北七県が一体となった広域プロ―モーション映像も制作し、内外に発信を始めた。東京ビッグサイトの「ツーリズムEXPOジャパン」やアメリカのトーランス市での東北六市の祭りプロモーション、台湾での復興感謝イベントでも活用された。東北六魂祭に代表されるクールジャパン資源の「祭り」や評価の高い日本酒に加え、「日本の奥の院・東北探訪ルート」プロジェクトとの相乗効果も期待できる。官民一体となった観光による地域活性化が復興の加速化には不可欠だ。

G7財務大臣会合を契機にMICE機運の醸成を!

寄稿東北活性化研究センター専務理事・渡辺泰宏

和歌山県・仁坂吉伸知事

2016年5月20日~21日、仙台市の秋保地区で「G7仙台財務大臣・中央銀行総裁会議」が開かれる。サミット本体の会議に次ぐ重要会議が東北・仙台で開かれるのは画期的だ。同市では今年3月国連防災世界会議も開かれ、世界的にも知名度を高めつつある。そこで、財務大臣会合を国主導の単発の会議だけで終わらせず、「MICE」を強く意識した交流人口拡大のきっかけにしたい。MICEとはMeeting Incentive tour Convention Exhibition の頭文字を取り、 多くの集客交流が見込まれるビジネスイベントの総称。会議そのものは国際金融情勢の課題を論議する重要なものだが、同時に震災から5年を経て、被災地がどこまで復旧・復興を成し遂げ、日本が再生しつつあるかを世界の要人に具体的に示すことができるチャンスだ。さらに報道陣も主要国から集まる。彼らに仙台近郊の観光スポットをアピールできれば、復興ツーリズムの拡大の契機にもなりうる。重要な国際会議を東北で十分こなせることを証明し、今後のインバウンドの増加に、はずみをつけたい。そのためにもホスピタリティに磨きをかけよう。