東北再生経済研究所

再生だより

伊勢志摩サミットで日本の安全、防災力をアピール

インタビュー三重県・鈴木英敬知事

三重県・鈴木英敬知事

 三重県は今年3月、2011年10月に作った緊急行動計画を改め、「新地震・津波対策行動計画」を策定した。「過去最大」だけでなく、「理論上最大クラスの南海トラフ地震」をも想定、被害規模は死者5万3千人、建物は全壊・焼失が24万8千棟にのぼる。計画は時間軸で「災害予防・減災」「発災後」「復旧・復興」に区分し、「ハードだけではなくソフトと一体となった総合的対策」になっている。東日本大震災を研究し尽くした非常に具体的なものになっている。また、考え方として「防災の日常化」を掲げ、「公助には限界がある。いざとなった時には自助がカギ」と鈴木英敬知事。避難訓練を繰り返し実施、「マイ・マップ・プラン」で避難路を環境の変化の中で確認し続ける。さらにハード面の対策に加え、2014年に導入した「みえ森と緑の県民税」で「災害に強い森林づくり」を進め始めている。来年5月にはG7伊勢志摩サミットが賢島で開かれるが、「これだけの国際会議が地方でも十分できることを立証し、災害に強い日本をアピールしたい」と知事。財務大臣・中央銀行総裁会議が開かれる宮城・仙台との連携で東北も含めた入念な準備で滅多にないチャンスを活かしきって欲しい。(文責 伊藤裕造)

新しい観光の役割と東北の可能性

寄稿日本海曳船株式会社専務取締役、前北海道東北地域経済総合研究所専務理事・井上徳之

日本海曳船株式会社専務取締役、前北海道東北地域経済総合研究所専務理事・井上徳之

 昭和29年(1954年)4月5日、青森駅15時33分発の臨時列車が21時間かけて翌日上野駅に到着した。その後、昭和50年まで続く集団就職列車の第1号と言われている。地方からの労働力供給が高度経済成長を支え、その象徴が東北だったのは論を待たない。それから60年、「いま」を使い続けた結果が「地方消滅」であり、「地方創生」だ。その流れに中で「観光」は切り札として存在感を強めているが、訪れる人が求めているのは、ふだん着のあるがままの姿であり、観光の本質は、人々と地域をつなぎ直すきっかけをつくることと再定義できる。そして、その先に大都市から地方への移住がある。かつての大移動には、企業・団体、自治体・学校など組織的なシステムがあった。一方、今の移住策は個人一人ひとりに委ねられている。東京と東北を新たな視点で結び、一過性でない継続した仕組みでつなぐ。そこに新しい観光の役割がある。

復興と観光戦略~海を渡った東北人の魂~

寄稿仙台商工会議所中小企業支援部 地域づくり推進チーム担当部次長・後藤 淳

仙台商工会議所中小企業支援部 地域づくり推進チーム担当部次長・後藤 淳

 イタリア・ミラノで今年7月11日、東北人の魂が華麗に舞った。ミラノ万博ジャパンデーで仙台七夕まつりや青森ねぶた、秋田竿燈など東北の10祭りによる「東北復興祭りパレード」が実施された。デクマーノと呼ばれる大通りを埋めた6万人の観客からは「日本の祭りを初めて見だが、どれも魅力的」、「東北に行ってみたくなった」と絶賛された。これまで行われたナショナルデーの中では最も評判がよかったと聞いている。だが、昨年東北に宿泊した外国人は延べ35.4万人で、全国シェアは0.8%、震災以降、東北は一人負けが続いている。これまでも震災後の過剰な自粛ムードや風評被害を払拭しようと「東北六魂祭」を仙台で開催、順次、盛岡、福島、山形と続け、今年は秋田で26万人を集めるなど、努力は続けている。しかし、繁忙期には積極的に外国人の受け入れをせず、閑散期に、という風潮が抜けていなかった。今後は、東北ブランドを確立、地域一体となった海外戦略の強化が必要だ。

東北はひとつ~特産品ガイドの挑戦

寄稿東北活性化研究センターフェロー・牛尾陽子

東北活性化研究センターフェロー・牛尾陽子

 大震災による販路の喪失と不評被害は東北全域の食関連産業に深刻な影響を与えている。その回復の一助に「東北・新潟のこだわり特産品ガイド」を作成、これまでに「2011冬・2012春」「2012夏・秋」に加え、3月には「2015」を刊行した。さらに英語版、繁体版、簡体版も作成、これまでに日本百貨店協会加盟250社を始め、通販、旅行会社、マスコミなど関係方面に配布したほか、34カ国の在外大使館、JETRO海外事務所にも送り、国内外から好評を得ている。世界遺産に認定されたことも追い風になり、欧米では和食の人気が高まっているが、東北が誇る魚食、米食、酒・発酵食品の紹介に力を入れており、今後の輸出への足掛かりになる情報発信を目指してもいる。また、公平性を確保するためと選考委員会(委員長・東北大学大学院農学研究科伊藤房雄教授)で選定を経ている。「東北はひとつ」という想い形にした日本で唯一の広域をカバーした食の情報発信でもある。