東北再生経済研究所

再生だより

南海トラフに果敢に挑戦する高知県

インタビュー高知県・尾﨑正直知事

高知県・尾﨑正直知事

 2012年8月末、南海トラフ地震の被害想定が明らかになった。全壊・焼失棟数は全国で238万6千棟、死者数32万3千人、経済被害額220兆円で年間国家予算の2倍以上にのぼる。高知県だけでも死者4万2千人、しかも、室戸市には高さ34メートルの津波が発生後3分で到達する。この衝撃の想定に、県民には「どうせ助からない」と、諦めの気持ちが広がったが、尾崎正直知事は「命を守る」その「命をつなぐ」挑戦を開始。大津波防護対策では、避難路、避難場所を1,445カ所、津波避難タワーを115基造る。しかも今年度中に1,361カ所、103基整備する。高齢者や障碍者のために避難シェルターを造る。避難タワーを造るのには、被災地と違い地元負担が生ずるが、実質的に市町村負担はゼロで推進する。さらに、「感震ブレーカー」の無償設置も進める計画で、防火には威力を発揮しそうだ。こういった対策で、2015年度末で死者数は11,000人まで縮小する見込みだ。31,000人が救われることになるのだ。(文責 伊藤裕造)

沿岸地域の安心・安全まちづくりに津波避難タワーを

寄稿日鐵住金建材株式会社野木製造所長・平山憲司

日鐵住金建材株式会社野木製造所長・平山憲司

 約100名が働く日鐵住金建材仙台製造所長になり、8カ月経った平成23年3月11日、大地震に見舞われた。その1時間10分後、仙台港に押し寄せた8mの巨大津波で当製造所は壊滅的な被害を受けた。しかし、構内に従事していた76名は構内にある高さ5m(海抜10m)の築山に逃れ、全員無事だった。
 工場は5か月後に6インチラインが、16インチラインは1年後に復旧したが、この間も大きな余震の度に築山に避難することがあった。そこで、高さ11m (海抜16m)の「避難タワー」を設計・建設した。200人の収容能力があり、去る3月に開かれた国連防災世界会議でも高い評価を得た。これで、ハード面は整ったが、忘れてならないのが避難訓練・防災意識のソフト面であると思う。

先人の偉業を現代に生かし後世に繋ぐー貞山運河を活用した地域振興

寄稿東日本リサーチセンター代表取締役、宮城大学事業構想学部客員教授・佐藤彰男

東日本リサーチセンター代表取締役、宮城大学事業構想学部客員教授・佐藤彰男

 宮城県にある貞山運河(貞山堀)は阿武隈川から松島湾を経て旧北上川までを結ぶ3つの堀と2つの運河の総称で、全長49kmの日本最長運河。安土桃山時代末期の1957年に伊達政宗が開削させた「木挽堀」が発端。江戸時代、明治と開削がされ、明治22年(1889年)に全線の開削と改修が完了し、「水の道」が完成した。運河沿いには日本最古の「石井閘門」(重要文化財)を始め、史跡、歴史遺産も多く、「運河の魅力再発見プロジェクト」に認定されてもいる。大震災で沿岸のクロマツの並木が損傷されたが、運河が津波被害を低減させたとの指摘もあり、宮城県は「貞山運河再生復興ビジョン」を策定した。その歴史的価値からも「日本遺産」、さらに「世界遺産」への登録を目指していきたい。

ユレーマス(高精度地震速報活用サービス)の機能と効用

寄稿ミエルカ防災社長・松尾勇二

ミエルカ防災社長・松尾勇二

 気象庁の緊急地震速報もユレーマスも地震が起こすP波とS波の伝達速度の差を利用して、主要動(S波)の到来を予測するが、ユレーマスはユーザー先に設置した地震計の情報を総合して解析(特許)し、より速く、より精度高く速報する。直下型でも主要動到来前の速報が可能で、減災効果は大きい。どのような効用が期待できるかというと①エレベーターの閉じ込め事故②不特定多数の人が集まる場所でのパニック③病院の機能低下電車④電車の転覆・脱線⑤高速道路での事故⑥生産設備の損傷⑦有毒ガスの飛散⑧危険作業での事故、などの防止ができる。さらに、ユーザーが拡大すれば、ネットワークの形成が可能となり、さらに精度が高めることができる。