東北再生経済研究所

再生だより

第3回国連防災世界会議

 2015年3月14日から18日にかけて開かれた同会議で、最終日ぎりぎりになって7項目の「仙台防災枠組」が決まった。①災害による死亡率減②被災者数減③経済的損失の減少④病院や学校などの重要インフラの損害減⑤防災戦略策定国数の大幅増⑥国際協力強化⑦災害早期警戒システムや災害リスク情報へのアクセス、利用拡大の7項目。しかし、当初目指した具体的数値目標の設定は見送られた。
 背景には先進国と途上国の対立がある。地球温暖化による気候変動が大災害を頻発させていることには先進国に一定の責任があるとの主張に対し、自国の防災の責任者は自国にあるとするのが先進国側。COP21への影響も考えるからだろうが、災害は直接的に人命に関わる。途上国と先進国との格差問題を考えると、対応のあり方を根本的に考え直した方がいいのではないか。大会を象徴した「ビルドバッ・バック・ベター」を実現するには、かなりの時間と災害経験を経ないと困難のようだ。(伊藤裕造)

津波被災地域の地域づくり

寄稿東北学院大学教授・柳井雅也

東北学院大学教授・柳井雅也

 震災から4年後の現実は厳しい。主な問題点は①人口減少②商業・飲食業・サービス業の市場縮小③公共事業が既存の基幹産業からの労働力移動④販路の喪失、である。こういった人口減少と市場縮小が起こっている地域で、活力を引き出す可能性があるのは、地域資源活用型(農漁業等)か、ニッチ市場を狙う中小企業だ。6次産業化を中心に定め、コミュニティビジネスを連動させる。商品設計とマーケティングについての地域学習や外部人材の活用も大事だ。具体的には福祉・介護分野への進出が一つだ。さらに国や県が地域づくりの認証制度を作り、自治体や商工会議所の職員に受講させ、優秀な人材を被災地復興支援に投入する制度を創ってはどうか。

東北の産業支援の新たな仕組み「創業スクエア」

寄稿仙台印刷工業団地協同組合理事長・針生英一

仙台印刷工業団地協同組合理事長・針生英一

 仙台市は2012年2月に「仙台経済成長デザイン-質的拡大による新たな成長-」を発表、具体的には2017年までに「新規開業率日本一」(現在は4位)を目指している。その一翼を担うのが仙台印刷工業団地組合が運営している「創業スクエア」。①ビジネス支援②デザイン活用支援③企業家育成、の三本柱でサポートする。成功事例に仙台駄菓子の製造販売の「日立家」がある。ターゲットを20台の女性に絞り、「chaco(ちゃっこ)」と名付けたミニサイズのパッケージを創り、従来の大箱詰め合わせから選択方式に変えた。あっという間に売り上げの3割までになった。岩手大農学部と共同開発した製麺業「川喜」の粉体殺菌処理技術で製造した生で日持ちする麺のブランディングの支援もした。

自立歩行型の復興へ

寄稿舞台アグリイノベーション社長・針生信夫

舞台アグリイノベーション社長・針生信夫

 島根県海士町に招かれ、アイリスオーヤマと舞台ファームの連携がなぜできたのか、語りに行ったが、逆に学ぶことが多かった。「自治体再生に奇策はない。町を株式会社化、町長は社長、町民は株主がベース」で行政サービスの拡充に腐心。町長の給料を50%カットするなどの人件費削減で2億円の資金を産み出し、U・Iターンの人達に月額15万円の生活助成金を3年間支給する仕組みを作った。さらに「公設民営」でハード面を用意し、起業もしやすい。これに対し、被災地は「魅力ある街の再生」など地方再生の新エンジンの設計が足らない。復興予算も5年で一区切り、予算に頼らず、新しい復興を模索することが急務であり。さらに精神やコミュニティなどのソフト面との掛け合わせが重要になってきている。